新型レーザー励起超高分解能光電子分光装置

本装置は,低温化と高エネルギー分解能化を更に進めた新しいレーザー光電子分光装置です.低温化に際して溜置式縦型クライオスタットを新たに開発し、輻射熱対策を徹底することにより最低到達温度1.0Kを達成しました.また高エネルギー分解能化のため、電子アナライザーのパラメーター改良及び電源系統の安定化、光学系におけるエタロン素子の導入等を行い、全エネルギー分解能70μeVが得られました.本装置は現時点の光電子分光装置の世界最高性能を有しています(図1)。
超伝導転移温度Tcの低い物質には非従来型超伝導機構が期待されているものが多く、現在も様々なプローブで研究が進められています。本装置を用いることにより、光電子分光では観測できなかった興味深い超伝導体の超伝導電子状態の研究が可能となります。更に本装置は、超伝導のみならず微小エネルギースケールにおける新規物性の探索にも有効であると期待されます。



図1:(左)金の光電子スペクトル.実線はFermi-Dirac分布関数によるフィッティング結果であり、1.5Kにおける全エネルギー分解能70μeVを示している.(右)スズの超伝導ギャップスペクトル。実線はDynes関数によるフィッティング結果であり、波数空間において等方的な超伝導ギャップが開いていることを示している。角度積分及び角度分解光電子分光により、超伝導ギャップの異方性を観測することで超伝導発現機構を調べることができる。

●仕 様
 電子分光器: Scienta HR8000 (スウェーデン・VG Scienta社)
 励起光源: 6.994 eV 真空紫外レーザー (擬似連続Nd:YVO4レーザー、非線形光学結晶KBBF及びエタロン素子の併用)
 冷却機構: 4He溜置式縦型クライオスタット
●性 能
 エネルギー分解能: >70μeV
 角度分解能: ±0.1 deg.
 冷却能力: >1.0 K
 温度制度: ±0.1度
 測定時真空度: 1×10E-11 torr

 

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