極超高分解能光電子分光装置

 

名称 極超高分解能光電子分光装置
装置のある場所 東京大学物性研究所 先端分光実験棟D110
装置の特徴

1.今までの光電子分光装置に比べて高いエネルギー分解能を持つ(2000年時点で世 界最高)

2.冷却機構にHe連続流型クライオスタットを用い、また熱シールドを計算に基づい て設計する ことにより、光電子分光装置として世界最高の冷却能力を達成。(>2.3K)

3.シリコンダイオード温度計を2箇所に使って校正することで、温度精度が非常に 高い。(±0.1K)

4.マニュピレーターを横にすることで、実験の際の利便性が向上。

この装置で行える実験

1.超高分解能角度積分光電子分光

2.超高分解能角度分解光電子分光

装置のスペック

エネルギー分解能 1.4meV

角度分解能 ±0.1deg

到達最低温度 2.3K

温度精度 ±0.1K

到達真空度 4x10E-11 torr

付属の主な計器

アナライザー GAMMADATA SCEINTA SES2002

He放電管 GANNMADATA VUV5000

 

主な実験成果


●マルチギャップ超伝導体MgB2 (参照論文 T. Tsuda et al., Phys.Rev.Lett, 91(2003)127001-127004, 87(2001)17006-17009)


高い超伝導転移温度を有する超伝導体MgB2において超高分解能角度分解光電子分光を行うことにより、2ギャップ超伝導が明らかにされた。2 種類のバンド(硼素2p のσとπ軌道に由来する二次元的および三次元的なバンド(またはフェルミ面)(図1(a)、(b)))と超伝導ギャップの大きさとの関係(図2(a)、(b)、(c))を明らかにすることで、高いTc 発現メカニズムの理解が与えられた。


図1 (a), MgB2 のフェルミ面形状(バンド計算). 実線、波線はそれぞれσ、πバンドが形成するフェルミ面. (b),
角度分解光電子分光によるバンド分散とバンド計算(実線、波線はσ、πバンド)の比較.

図2 フェルミ準位近傍の光電子スペクトルの温度変化(a)、(b)と超伝導ギャップの温度依存性(c).

 

●異方的低温超伝導体2H-NbSe2 (-電荷秩序と超伝導)


電荷密度波転移温度TCDW=33K,超伝導転移温度Tc=7.2 Kを有する2H-NbSe2において、低温下、高分解能の角度分解光電子分光(He Ia (21.218eV))を行い、フェルミ面と超伝導ギャップの異方性が明らかにされた。(参照論文 T. Kiss et al., Nature Physics 3 (2007) 720-725)


図3 2H-NbSe2のフェルミ面(a)と超伝導ギャップの異方性(b)

●其の他、4d電子系遷移金属酸化物Ca2-xSrxRuO4 (x=0.2) (-重い電子)、

           ボロカーバイト超伝導体、バナジウム酸化物など成果は非常に多数


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