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木下グループ 時間分解・マイクロビームライン建設

     

     放射光高輝度軟X線ビームラインにおける先端分光技術開発

研究メンバ ー

木下豊彦
室隆桂之
大沢仁志
大河内拓雄
福山祥光

 

 

 

 

 

 

研究概要

  これまでSPring-8では、高輝度軟X線を用いた先端的な分光研究を進めてきたが、最近、世界各地で建設の進んでいる3GeVクラスの新型光源のアクティビティに対してより競争力のある研究を進めるために、現在BL25SUの改造を進めている(図参照)。この新ビームラインでは、これまでの高エネルギー分解能に加え、ナノ領域、ミクロン領域の微小領域の顕微分光を進めることにより、新たな機能性材料の研究を進めることを目的としている。 本プロジェクトでは、我が国の軟X線研究をリードしてきたBL25SUに関わるスタッフと、物性研究所のLASORグループが共同して研究開発を進めることで、より高度な軟X線物性科学プラットフォームを構築する。ミクロンサイズの試料に対する角度分解光電子分光(ARPES)の実現を目指した開発研究や、世界的にも例の少ない、放射光光電子顕微鏡(PEEM)とレーザーを組み合わせたポンププローブ実験をより高度なものに発展させることで、局所領域の電子状態、またそれらの時間発展、或いは状態変化の空間伝搬の様子を直接観察する。より高度な性能を発揮して様々な機能性材料の電子状態、磁気状態研究に応用していく実験環境構築を目的とする。

(1) 特に、今後重要性が増す微小領域の角度分解光電子分光(マイクロangle-resolved photoelectron spectroscopy; ARPES)実現へ向けた開発研究と、

(2) レーザーをポンプ光とする時間分解光電子顕微鏡(photoemission electron microscope; PEEM)実験の高精度化を柱にする。

(3) また、物性研の軟X線レーザー設備で行った研究のうち、光エネルギーの可変性など放射光での実験が必要な対象に関してはBL25SUでの研究も実施する。本プロジェクトの目的である、プラットフォーム構築により、高度な協力関係によって、放射光による軟X線分光環境を提供する。
 

微小領域角度分解光電子分光環境の構築

 物質のバンド情報を得るために必須な高分解能のARPESを、マイクロビームで実現することにより、不均一物性などの新しい展開や、微小サンプル、多結晶サンプルなどへの応用が可能になることが期待され、そのための開発研究を行う。マイクロビーム集光素子と、半球型光電子分析器(二次元的な角度分解測定機能を持つ)を組み合わせた測定装置を開発する。

時間分解軟X線顕微分光の高度化

 パルスレーザーと放射光パルスを同期したポンププローブ実験は世界各地で実現している。しかしながら、高分解能の実空間観察にこれを適用している例はほとんどない。我々はこれまでに蓄積したノウハウに加え、東大物性研のレーザーの専門家とも共同で開発を進めることで、より高精度な時間分解顕微分光実験を実現する。光触媒反応、光励起スピンダイナミクス、光磁気スイッチング、光による半導体のキャリア励起ダイナミクスなどの時間分解情報が、実空間分布やその伝搬の様子を含めて観察できるようになり、スピントロニクス材料や光デバイスなど、多くの機能性物質開発に役立つものと期待される。これまで行ってきた時間分解PEEMでは、顕微分光以外ではほとんど問題とならないレーザーパルスの空間強度揺らぎが観測されている。また、受光系での有効放射光パルスのゲーティングでは電圧変動による空間分解能の悪化を招くため、光チョッパー導入の重要性が明らかになってきた。また、十分な統計精度が得られないことも高精度測定の障害となっている。これらの問題を解消し観測精度を向上させること、加えて光電子分光、吸収分光(磁気円2色性分光を含む)など様々な実験手法に対して時分割計測を適用できる環境を構築することで、今後新光源が実現した際にも研究対象/手法に飛躍的な発展が期待される。

委託・実施機関

 
(受託者(委託先))
 住 所 

 東京都文京区本郷七丁目3番1号
 機関名 国立大学法人東京大学

 代表者 辛 埴

 E-メールアドレス:

 shin@issp.u-tokyo.ac.jp


(再委託先)
 住 所 

 兵庫県佐用郡佐用町光都

 一丁目1番1号
 機関名 

 公益財団法人高輝度光科学

 研究センター

 代表者 木下 豊彦

 E-メールアドレス: 

 toyohiko@spring8.or.jp